●アトピー性皮膚炎はどんな病気?
1) アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら長く続きやすい、痒みが強い湿疹です。湿疹は皮膚の炎症の一つですが、アトピー性皮膚炎の炎症では基本的にはTh2といわれるリンパ球が重要な役割をもっていると考えられています。このことはIgE抗体が作られやすいことにもつながっています。アレルギー性気管支喘息やアレルギー性鼻炎などにおいても同じように考えられています。これらの疾患はまとめてアトピー性疾患といわれています。
2) このような病気の性質から、アトピー性皮膚炎は喘息やアレルギー性鼻炎など他のアトピー性疾患をしばしば合併します。また、家族内の発症率が高く、発症しやすさは親から子供に伝わる傾向がみられます。両親のどちらかにアトピー性皮膚炎の既往がある場合は平均して56%、両親ともその既往がある場合は75%、同胞に既往がある場合は49%、家族に全く既往がない場合は21%の割合でそれぞれ子供がアトピー性皮膚炎を発症する可能性があるという調査結果が報告されています。
3) アトピー性皮膚炎では、皮膚の水分を保つ能力が低い、痒みを生じやすい、感染が起きやすいなど皮膚の働きに異常があり、皮膚のバリア機能が低下しています。
4) アトピー性皮膚炎はこのような体質的な要因にいろいろな環境要因が加わって発症すると考えられています。
●アトピー性皮膚炎の現状は?(疫学)
1) 平成12年から14年にかけて、アトピー性皮膚炎の患者様が人口あたりどれくらいの割合であるのか(有症率)専門医の健診によって調査しました。その結果、全国平均有症率は4カ月児12.8%、1歳半児9.8%、3歳児13.2%、小学1年生11.8%、小学6年生10.6%、大学1年生8.2%でした。
2) アトピー性皮膚炎と診断された人のおよそ75%〜85%は軽症でした。しかし、乳幼児期よりも学童期の方に症状が悪化する傾向がみられています。
●アトピー性皮膚炎の基本治療は?(治療ガイドライン)
ここでは、厚生労働科学研究班によって作成された「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2002」に従って治療の基本について説明してみましょう。この治療ガイドラインはアトピー性皮膚炎の診療にかかわる医師を広く対象として作成されたものです。
アトピー性皮膚炎を正しく治療するためには、診断が正しいこと、症状の程度(重症度)の判断が正しいことが重要ですが、これはアトピー性皮膚炎の診療に習熟した医師によってなされます。
アトピー性皮膚炎の基本的な治療の要点は、1)原因・悪化因子の検索と対策、 2)スキンケア、 3)薬物療法の3点です(図1)。これら3点は同等に重要ですが、患者様の症状やその他の状況によって、適切に組み合わせます。その治療効果が十分に得られるためには、患者様と医師や医療スタッフとの間で十分に情報を交換し、よいパートナーシップ、信頼関係を築くことが大切です。
1) アトピー性皮膚炎はいろいろな要因で発症・悪化しますが、代表的なものが図2に示されています。これらの他にも様々な原因・悪化因子が知られていますが、患者様によってそれぞれの因子の重要さは異なります。血液検査や皮膚テストなどの検査結果からのみでは、それを決めることはできません。主治医とよく相談して原因・悪化因子に対する対策を立てることが大切です
2) アトピー性皮膚炎の皮膚にはいくつかの機能異常があることを述べましたが、それを補正するためにはスキンケアが重要です。その基本は毎日の入浴・シャワーによる皮膚の清潔、保湿剤をもちいた皮膚の保湿です。また、痒みを起こすような要因を避け引っ掻きによる皮膚の傷害を避けることなどの注意も大切です。
3) 悪化因子に注意し、スキンケアに気をつけても症状が軽快しない場合は薬物による治療が必要です。その基本は外用療法と内服療法です。外用療法の主体はステロイドおよびタクロリムス外用薬です。内服療法の主体は抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬です。
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ステロイド外用薬 |
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かつて、アトピー性皮膚炎へのステロイド外用薬の使用は、その副作用を心配するあまり拒否される風潮がありました。ステロイド外用薬に副作用があることは事実ですが、皮膚炎を抑制するには大変有効な薬物です。ステロイド外用薬の種類、塗布部位、量や回数など医師の指示をまもって使用すれば決して危険な薬物ではありません。そして、1〜2週間に1度は必ず受診して皮膚の状態をチェックしておくことが重要です。 |
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タクロリムス軟膏 |
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現在、2歳以上で非ステロイド系免疫抑制薬であるタクロリムスの外用薬が使用できるようになっています(2歳以上16歳未満:0.03%軟膏、16歳以上:0.1%軟膏)。その効果はIII群のステロイド外用薬と同じくらいの臨床効果といわれています。現在のところ、ステロイド外用薬のような副作用はみられていません。したがって、ステロイド外用薬で副作用が起きやすい顔面や頸部に有用性が高いといわれています。
しかし、ステロイド外用薬の代わりに使用するものではなく、その使い方は医師の指示をよくまもって使用することが大切です。 |
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抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬 |
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これらの薬物は主に痒みを抑える目的で使用します。これらの抗ヒスタミン作用をもつ薬物は蕁麻疹が合併したときはそれを抑制しますが、湿疹症状を抑えることはできません。したがって、漫然と服用するのではなくその有効性を確かめながら使用することが大切です。 |
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●その他気を付けること
1) 伝染性膿痂疹、カポジ水痘様発疹症、伝染性軟属腫などの感染症が合併しやすいので注意が必要です。
2) 痒みのために眼をこすったり叩いたりすると白内障や網膜剥離などが起きやすいので注意が必要です。
3) 使用している外用薬で「かぶれ」が生じて症状が悪化することがあるので注意が必要です。
4) ここに述べたのは基本の治療です。必要に応じてこの他の治療が加えられることもありますが、それは主治医の判断によります。
5) この基本の治療を1カ月位続けても改善しない場合は、より専門性の高い医療施設を受診することも必要です。
ここでは、アトピー性皮膚炎の基本的な治療について、最近の情報を加えながら解説してみました。アトピー性皮膚炎の本態と治療を理解するうえでお役に立てば幸です。
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