独立行政法人国立病院機構相模原病院・統括診療部長 長谷川
眞紀
季節の変わり目は、要注意。
季節の変わり目になると喘息が悪くなる、台風や寒冷前線が近づくと喘息が悪くなる、などという訴えは日常診療の中でよく聞く言葉です。事実、気管支喘息発作の好発時期は、本邦においては季節の変わり目である梅雨時と秋であり、喘息による入院患者も9、10、11月に最大となります。
秋は飛散アレルゲンが多い季節
しかしこの原因は、多くはアレルゲンの季節的変動に求められており、気象の変化そのものがどの程度に寄与しているか、系統的な研究は多くありません。
本邦における最も重要な吸入アレルゲンである屋内塵−ダニ(HD-M)のアレルゲン量は秋に最大となり、喘息の原因となる花粉類、ブタクサやヨモギも秋に飛散します。こういった要因を抜きにして純粋に気象変化のみを取りだして、その発作への影響を見ることは実際上不可能といえます。
気温の低下は喘息の誘因
経験的には、気象要因(気温・湿度・気圧)の中で、気温がもっとも影響が強く、特に急激な変化、つまり前日に比較して5℃以上の低下があるときに発作がもっとも起こりやすいとされていて、本邦におけるガイドライン−喘息予防・管理ガイドライン2003にもEBMに基づいた喘息治療ガイドライン2004にもそのように記載されています。
人工的気象変化による影響
我々は、環境調整装置(約15uの密室で、気圧610〜910mmHg、温度10〜40℃、湿度40〜90%の範囲で調整できる)のある部屋に、喘息患者さんに入ってもらい、これらの環境条件を短時間のうちに人工的に変えて、喘息の呼吸機能、気道過敏性に及ぼす影響を調べました。
1)気温の変化
呼吸機能に及ぼす温度変化については、25℃から10℃に30分で低下させると、19名中12名(63%)において1秒量が10%以上低下しました。このうち10名は再び温度を25℃にしたら1秒量は元に戻りました。気道過敏性に対する影響では、2週間以内の別々の日に25℃と15℃と条件を違えてアセチルコリン吸入試験を行ったところ、10名中2名の患者さんは低温の15℃で4倍以上の閾値の低下(過敏性の上昇)をみせ、2倍の閾値の低下をみた患者が4名、逆に2倍の閾値の上昇(過敏性の低下)をみた患者は3名いました。
気温が低下すると、気管支が過敏になる喘息患者さんが多いという結果です。
2)気圧の変化
気圧の変化(760mmHgから610mmHgに低下)では、1秒量に10%以上の変動をみた患者はいませんでしたが、11名中2名は低気圧下で4倍以上のアセチルコリン吸入閾値が低下(過敏になる)しました。
人工的気象変化による影響
このように、気象条件の変化が気道過敏性、呼吸機能に影響を与え、特に低温への変化、低気圧によって悪化する患者がいることが推測されます。したがってガイドラインにも記載されているように、気象条件によってコントロールの悪化が予想される場合には、予防的薬物治療や日常生活上の注意により発作を予防することが大切です。
用語解説(JAANet
Station 編集委員会 須甲 松伸)
・呼吸機能
喘息を診断、重症度を判定するために、スパイロメーターで肺活量、1秒量、ピークフロー値などの呼吸機能を測定します。喘息は、気道が狭窄して空気の流れが制限されるため、1秒量やピークフロー値が減少します。
・気道過敏性
喘息患者の気管支は、健常者に比べ様々な刺激(アレルゲン、気管支感染、寒冷、運動、煙、においなど)に敏感で、容易に収縮して呼吸が苦しくなります。
・アセチルコリン吸入試験
気管支の過敏の程度を測定するため、気管支収縮物質のアセチルコリンを吸入させ、呼吸機能の1秒量が20%減少した時の濃度をもって吸入閾値とします。その閾値が低いほど過敏性が高いといいます。
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