帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学 大田 健 教授
大気汚染には大きく2つの種類があります。すなわち室内空気汚染と屋外大気汚染です。いずれも寄与因子と位置付けられるもので、原因因子への曝露後にアレルギー疾患の発症の可能性を高める因子、あるいはアレルギ−疾患を発症する素因自体を増大させる可能性のある因子です。
室内の大気汚染
室内汚染物質で代表的なものは、喫煙と暖房器具や建材などから発生するガス状物質です。喫煙により発生する煙には、4,500種類以上の化合物や汚染物質が含まれており、粒子層と気層から成っています。粒子層にはニコチンやベンツピレンなど、気層には一酸化炭素、ニトロソアミンや窒素酸化物などが含まれています。これらの有害物質の含有量は、喫煙者が直接吸入する主流煙よりも周囲のヒトが吸入する副流煙の方が多く、受動喫煙による健康被害が問題になっている由縁です。これまでの報告では、アレルギー素因(アトピー体質)のある小児では、アレルギー疾患を発症するリスクが片親よりも両親が共に喫煙するほうが高く、特に母親が喫煙することによる受動喫煙の影響が大きいとされています。また妊娠中に喫煙すると、胎児への影響として出生後の乳児の肺機能の低下や気道過敏性の亢進に関与すると考えられています。
したがって、喘息をはじめとするアレルギー疾患では、本人のみならず家族全員が禁煙すべきです。暖房器具は燃焼性で室内に排気するタイプのものが問題になるわけですが、該当する場合には濃度を上昇させない方法として換気に注意する事が必要です。
建材に由来する揮発性有機化合物は、症例によっては喘息症状を惹起することが知られており、十分な換気が重要な対策となります。また最近研究が進んでいるものとして、エンドトキシンをはじめとする微生物の産物による一連の生体反応(自然免疫)があり、アレルギー疾患への関与が解明されることが期待されます。
屋外の大気汚染
屋外大気汚染は、二酸化窒素を初めとする窒素酸化物、オゾン、二酸化硫黄を初めとする硫黄酸化物などのガス状物質とディーゼルエンジン排気微粒子(DEP;
diesel exhaust particulates)を代表とする浮遊粒子状物質(SPM;
suspending particulate matter)から成っています。ガス状物質の吸入による実験では喘息症状を悪化させることやアレルギー反応の元とも言えるIgE抗体の産生を高めることが報告されています。またSPMの代表であるDEPは、スギの花粉と一緒にマウスに鼻から吸入させると、IgE抗体の産生が高まりスギ花粉症に関与する可能性や、マウス気道にDEPを単独で投与すると気道を敏感にして喘息の悪化に寄与する可能性が報告されています。ただし、いずれの結果も実験に用いられた濃度が非常に高いことから、そのまま現実にあてはめることには慎重な態度がとられています。いまのところ喘息を初めとするアレルギー
疾患の増加と屋外大気汚染との関連性を検討するための疫学的研究では、報告によるバラつきが大きく確証が得られていません。
大気汚染を含めた生活環境を改善することは、直接的なアレルギー疾患の発症防止につながるかどうか確証は得られていませんが、広く健康の向上につながるものであり、個人から国家までそれぞれレベルで今後とも努力を継続することが必要だと考えられます。
リンク
・環境省:
>>>http://www.env.go.jp/
・リウマチアレルギー情報センター:
>>>http://www.allergy.go.jp/
・環境再生保全機構:
>>>http://www.erca.go.jp/
・大気汚染物質広域監視システム:
>>>http://w-soramame.nies.go.jp/
・喘息治療のEBM集:
>>>http://www.allergy.go.jp/allergy/ebm/index.html
・東京都アレルギーホームページ:
>>>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kanho/allergy/allergyindex.html
用語解説
|