今年のハチ刺され被害
毎年、ハチ刺されにより亡くなられる人は約20-30名と報告されております。ハチ刺され被害は、ハチの繁殖期である7-10月に多く報告されております。また、ハチの大量羽化は、5-6月の雨の少ない気温の高い夏場に発生し、今年は、ハチ刺され被害が例年より多くなることが予想されます。そして、ハチは山林や農村部に多く生息し、このような場所へ出かける時には特に注意して下さい。
ハチ刺されによる症状
ハチに刺された人の多くは、刺された局所の発赤、熱感、腫れなどの症状を認め数日後には消失します。しかし、約20%の人は、何らかの全身症状(蕁麻疹、顔面の腫れ、吐気、嘔吐、呼吸困難、動悸等)を認め、約2-3%の人にショック症状を起こすことが報告されております。そして、このような全身症状の出現は、ハチに刺されてから5-30分後に認められ、治療が遅れることによって死亡する可能性があります。
ハチ刺されによるアナフィラキシーの発生機序
ハチ刺されによる全身症状の多くは、ハチ毒に対する即時型アレルギー反応が原因であり、これをアナフィラキシーとも呼びます。一部の人にハチに刺されるとハチ毒に対する抗体(ハチ特異的IgE抗体)が血液中に作り出されます。再び、ハチ刺されによって、ハチ毒(抗原)とハチ特異的IgE抗体が反応(抗原抗体反応)します。そして、この抗原抗体反応によって、肥満細胞から化学伝達物質が体内へ放出されアナフィラキシー症状を引き起こします。ただし、ハチ毒中にも肥満細胞と同様に化学伝達物質が含まれており、多量のハチに刺された場合でも、アナフィラキシー様症状が認められることもあります。
ハチのアナフィラキシーの診断
詳細な問診(ハチ刺されによる全身症状の既往)、皮膚テスト陽性および血液中のハチ特異的IgE抗体陽性であればハチのアナフィラキシーと診断しております。
ハチ刺されにおける予防法
色;黒や花柄模様を好むため白、赤、黄色などの原色の服を着る。
におい;ヘアスプレー、ヘアトニック、香水等の化粧品を使用しない。
音;虫除けなどの小型超音波発信器も興奮を誘うため使用を控える。
行動;追い払う様な行動は興奮を招くため避ける。
ハチに刺された時の応急処置
応急処置として、冷水で冷やし四肢を刺された場合心臓に近い方をゴムなどで縛ります。また、アンモニアはハチ毒を中和する作用はなく、逆に皮膚を刺激し皮膚炎を誘発し、尿などは細菌感染を引き起こす危険性があるため使用しないで下さい。もし、全身症状が認められた場合、第3者に連絡をとり仰臥位か足側高位(ショック体位)の姿勢(決して背負わないで下さい)を保ち、最寄りの医療機関を受診して下さい。また、患者さん自身におけます自動車運転は、事故を招く危険性があるので決して行わないで下さい。
緊急治療としてのエピネフリン
アナフィラキシーの治療として、エピネフリン注射が最も有効な方法です。最近、携帯用エピネフリン自己注射キット(商品名;エピペン)が、医師の処方の元で一般の人にも使用できるようになりました。ハチ刺されによる全身アナフィラキシー症状や局所過剰反応の既往ある人は、アナフィラキシーショックを起こす危険性が非常に高く、携帯用エピネフリン自己注射キットを常備する必要があります。また、ハチ刺されによる全身症状の既往のない人でも、ハチとの接触機会が多い人やハチ特異的IgE抗体陽性の人は、アナフィラキシーを起こす危険性があり、可能であれば自己注射キットを持参された方がよいと思われます。
体質改善を目的とした根本的治療法(免疫療法)
ハチ毒を用いた免疫療法は非常に有効でありますが、現在保険適応がないことから治療できる医療機関が限られております。
最後に、もしハチに刺さされた場合、まず落ち着き、適切な応急処置や緊急治療を行なって頂き早急に医療機関を受診して下さい。
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