鼻アレルギー情報
皮膚アレルギー情報
気管支喘息情報
(成人・小児)
目のアレルギー情報
食物アレルギー情報
アレルギーの治療に役立つ情報
アレルギー講演会
記録集
患者会紹介&情報
リンク集
(公的機関・施設)
アレルギー講演会記録集 < 記録集一覧に戻る >

第6回:アレルギー講演会

アレルギーの克服へ向けて
―アレルギーの治療と予防の実際―


挨   拶 川上保雄 先生(財団法人日本アレルギー協会会長)
座   長 宮本昭正 先生(財団法人日本アレルギー協会関東支部支部長/日本アレルギー学会理事長)
講 演  「アレルギーの克服に向けて」
  内   科 冨岡玖夫 先生(東邦大学医学部佐倉病院副院長)
  小 児 科 赤澤 晃 先生(国立小児病院アレルギー科医長)
  耳鼻咽喉科 久松建一 先生(駿河台日本大学病院耳鼻咽喉科部長)
  皮 膚 科 小澤 明 先生(東海大学医学部皮膚科学教授)
  眼   科 深川和己 先生(東京歯科大学眼科非常勤講師)

 医師と患者間のパートナーシップのきずなを強めてアレルギー性疾患を克服しようと、第6回アレルギー講演会(主催:(財)日本アレルギー協会関東支部/(財)日本アレルギー協会、共催:アレルギー情報センター/アベンティス ファーマ(株)、後援:厚生省、(社)日本医師会、日本アレルギー学会)が2月19日、東京・ヤクルトホールで開催された。この講演会は、IgEの発見を記念するアレルギー週間の全国啓蒙活動の一環として行われ、今年の主題は「アレルギーの克服に向けて、アレルギーの治療と予防の実際」。川上保雄・(財)日本アレルギー協会会長の挨拶、わが国におけるアレルギーの臨床のエキスパートによる講演の後、パネルディスカッション「アレルギー疾患の治療と予防―患者さんからの質問に答えて」に移り、約500人の参加者との間で熱心な質疑が交わされた。その要旨を紹介する。


●内科領域 

冨岡 玖夫 氏(東邦大学医学部佐倉病院副院長)

気管支喘息の基本病態
 気管支喘息は、種々の原因や悪化因子が気道の組織内に侵入した結果、気道に狭窄や閉塞が起こって気流が制限され、酸素交換に支障を来す疾患である。気道の狭窄や閉塞は、気管支平滑筋の収縮、粘膜の浮腫、痰などによって起こる。
 このときの気管支の粘膜組織には、気道上皮細胞の剥離、上皮細胞を支える基底膜や平滑筋の肥大、また粘膜組織の中に炎症を起こす好酸球やリンパ球の浸潤が著明にみられる。これを放置すると、気道のリモデリングが起こり、呼吸機能の低下を招く。
 すなわち、気管支喘息の実態は慢性剥離性好酸球性気管支炎であり、その診断には、次の4項目が満たされなければならない。
1)可逆性の気道狭窄・閉塞の証明
2)気道炎症 (好酸球性) の証明
3)気道過敏性亢進の証明
4)類似疾患の除外
 気管支喘息は、その発症にアレルギー性の機序が関与しているので、基本的にアレルギー性結膜炎やアレルギー性皮膚炎と同様にアレルギー性の炎症ととらえられる。また、炎症とは例えていえば火事であるから、アレルギー性炎症への対処の仕方としては、初期消火と火の用心が基本とされる。前者に相当するのは早期発見・早期治療、後者に相当するのは原因、悪化因子、誘因の除去である。

客観的な病状の記録が重要
 早期発見・早期治療のためには、患者さんや家族が初期症状を熟知することが必要である。患者さんは、一般的に自覚症状の有無で病状を独断的に判断する傾向があるので、まず、自覚症状でなく客観的なデータに基づいて病状を判断すること、および発症の原因、悪化因子、誘因に関する確実な情報を医師に伝えることを、習得させることが大事である。
 病状の客観的・具体的指標には、体温、血圧、血糖値、ピークフロー(PEF)値などがあるが、特にPEF 値は重要である。発症原因、悪化因子などを除去するためには、それらの因子を知ること、またアレルゲンの同定も必要である。これらの情報を得るうえで、喘息日記などのメディカルレコードは重要な役割を果たす。
 アレルギー性疾患を管理する際に、患者さんが孤立して一人よがりの管理をするのでなく、患者・家族と医療チームとのパートナーシップに基づく共同管理という原則が守られなければ目的の達成はおぼつかない。共同管理のカギを握るのが、報告、連絡、相談(ほう、れん、そう)のかたちでの情報伝達である。喘息日記を記録することによって、例えばペットなどの生活環境、喫煙、食習慣、運動などによって病状にどんな変化が起こるかというように、情報の中身が具体的に記述されるようになる。日本アレルギー学会も、治療に有効な手段として日記を重要視している。

気管支喘息の薬物療法
 喘息の基本病態がアレルギー性の炎症であるとはいえ、実際には小児の喘息では70?80%にアレルギー機序が関与しているのに対し、成人喘息ではアレルゲンを同定できない例が多い。このため、治療が複雑化し、手こずるもとになる。
 喘息の治療薬は、発作が増悪したときに救急治療薬として用いるレリーバーと長期管理薬として用いるコントローラーに大別される。現在、最も重要な位置を占めるのがステロイド薬で、救急治療薬としては内服・注射が用いられるが、長期管理薬としてはもっぱら吸入ステロイド薬が用いられる。
これと合わせて気管支拡張薬が用いられ、救急治療薬としてはβ2 刺激薬、長期管理薬としては徐放性テオフィリン剤が代表的である。抗アレルギー薬は長期管理薬としてのみ用いられる。
 長期管理薬の効果は目に見えにくく、特に風邪を引いて喘息症状が悪化した際などはその効果を疑う人も多いが、病状を客観的に把握することによって、その効果を明確にすることも可能である。図1は、風邪を引いてPEF 値が警戒レベルに近い値にまで低下した際、吸入ステロイド薬を一時的に増量することによりPEF 値が正常値へと回復した例である。
喘息治療の目的は、健常人と変わらない日常生活ができることである。そのための最大のポイントは初期消火であり、薬物療法などについては、日本アレルギー学会のガイドラインに示されている。しかし、治療の目的をより確実に達成するカギは、対処の仕方を初期消火から火の用心へ、すなわち発症の予防へと切り替えることにあり、患者さんへの指導にもその配慮が望まれる。


●小児科領域 

赤澤 晃 氏 (国立小児病院アレルギー科医長)

T細胞の分化がアレルギー反応優位の方向へ
わが国のダニ・スギ花粉に対する特異的IgE抗体の保有者は、1960年代にはほとんど存在しなかったが、近年では約70%が保有していることが、医学部学生を対象とした調査で明らかにされている。このことは、アレルギー性疾患の増加を裏打ちするとともに、IgE抗体の産生を促す環境要因が強まっていることを示唆している。
 IgE抗体産生への傾斜は、ヒトの血液中のT細胞の分化の動向にもみられる。各種のT細胞はいずれも未熟なナイーブT細胞から分化してできるが、免疫・アレルギー現象に関係が深いのは、このうちTh1 およびTh2 の2種類である。
 最近の研究によると、分化の初期の段階で、抗原提示細胞によってTh2 への分化誘導がいったん行われると、その後もTh2 への分化が持続し、Th1 への分化が阻害される。Th2 はB細胞と反応してB細胞をIgE抗体産生細胞へと分化させ、一方、Th1 はB細胞をIgGなどの免疫グロブリン産生細胞へと分化させる。したがって、Th2 への分化誘導はIgE抗体を産生しやすい体質、すなわちアレルギーの発症に関係していると考えられる。
 感染症が起こると、逆に免疫系につながるTh1への分化が誘導されてアレルギーの機序を抑制するが、最近のように感染症が減少した環境のなかでは免疫系の活動が鈍化し、Th2のアレルギー機序の活動が優位となるためである。

遺伝的素因と多様な原因で発症
 アレルギー性疾患は、単一の原因で起こるのでなく、多様な原因が複合して起こる多因子性疾患である。食事、気候、ダニ・ほこり、建築構造などに由来する室内環境、大気汚染、感染、ストレス、遺伝的な体質も、全て発症にかかわっており、かかわる程度は疾患により異なる。例えば、スギ花粉症は花粉のほかいくつかの因子がかかわる比較的簡単な系であるが、アトピー性皮膚炎や喘息は多数の因子が多彩なかかわり方をしているために、治療法も複雑、多岐にわたる。
 小児のアレルギー・マーチも、アレルギー性疾患の原因の多様さを映し出している。すなわち、遺伝的素因の上に、成長段階で、食物感作、乾燥肌、皮膚感染症、ダニ感作、呼吸器感染症、花粉といった因子が次々と重畳する結果、まず食物アレルギーから始まり、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎が順を追って出現する。
 各因子の発症へのかかわり方はきわめて複雑で、例えば食物の場合は、食生活の変化が図2の多様な経路と段階を経て発症を促す。少子化も、きょうだいの減少、核家族化、感染に対する予防医学の発達による感染の機会の減少が、T細胞の分化を前記のアレルギー機序へと誘導する要因となる。
 これら各因子が個々に発症に作用するのではなく、全体の総和が、感染症の罹患などを契機に体の防波堤の限界を超えたときに、洪水のように発症を起こすと考えられている。発症の防止には、薬剤によって防波堤を上積み補強する方法もあるが、体の鍛練によって防波堤を補強し、同時に環境整備とストレス・マネージメントにより流量を減少させることにまさる方策はない。

薬物療法と生活指導のポイント
 個々の疾患への対応の細目は各専門家に譲り、基本的な原則をあげると、薬剤特にステロイドの中途半端な使用は絶対に禁物である。ステロイドは最初思い切って使用し炎症を確実に抑えること、さらに一気に中止せず、皮膚の下の炎症が鎮静するのを待ってステップダウン法により離脱を図ることが重要である。
 患者さんに対する指導は、次のように具体的に示すことが望ましい。
 食事:1)パンよりご飯、2)肉より魚、3)生野菜より温野菜、根菜類、3)Ca源は牛乳に偏重せず、海藻類、小魚、根菜類を摂る、4)ケーキ、クッキーよりあられ、せんべい、サツマイモなど、5)加工食品より素材の素性が分かる手作り料理を。
 住環境:1)ダニを通さない高密度織物の布団カバーを使う、2)じゅうたんを外す、3)布地のソファーはやめる、4)カーテンをこまめに洗う、5)掃除を毎日行う、6)HEPAフィルター付きの空気清浄機を使う、7)新建材・ビニールクロスを極力避ける、8)観葉植物・ペットを室内に入れない。
 生活習慣:1)早寝早起き、十分な睡眠、規則的な生活リズム、2)水かぶり、皮膚摩擦などの鍛練、3)運動の習慣、4)腹八分目、5)些事にこだわらず、おおらかな気持ちで過ごす、6)子どもを親の価値観で縛らない、7)子ども同士で遊ぶ機会を通じてソーシャルスキル、ストレス耐性を育てる。


●耳鼻咽喉科領域 

久松 建一 氏(駿河台日本大学病院耳鼻咽喉科部長)

鼻の構造もアレルギー発症に関係
 花粉症というと、花粉アレルゲンによって発症し、くしゃみ、鼻汁、鼻閉を3主徴とする比較的単純なアレルギー疾患、というイメージが強いが、近年、発症数の増加とともに、難治性鼻アレルギー症例の問題が浮上してきた。
 その1つは、鼻の構造が症状に結びつくケースである。鼻炎とは、鼻中隔によって左右に仕切られた固有鼻腔の炎症をいい、そのうちのアレルギー機序に由来するものがアレルギー性鼻炎である。炎症が固有鼻腔内に極限せず副鼻腔にも起きているものを鼻アレルギーという。副鼻腔のX線撮影によって判別できる。実際には、アレルギー性鼻炎の患者さんで副鼻腔の粘膜も腫脹している例が多い。
 アレルギー性鼻炎で炎症が最も起こりやすいのは、固有鼻腔に突起した下鼻甲介の粘膜である。アレルギー性鼻炎を治療して鼻閉症状がどうしても改善しないケースでは、もともと鼻中隔の弯曲や突起があるなどの変形のために、鼻中隔と下鼻甲介の間の空気の通路(総鼻道)図3が狭いところへ粘膜の炎症が加わって閉塞を起こしている例が少なくない。固有鼻腔の変形が大きい場合には通常の保存的治療法の適応でなく、手術の対象となるので、私たちは初診時にまず形態異常の有無を観察し治療法選択の指針の一つとしている。

鼻アレルギーの診断
鼻炎の自覚症状は、他の鼻の疾患やカゼにもみられるが、鼻アレルギーでは朝に起こる発作(モーニングアタック)が特徴である。この状態が連日持続する場合にはアレルギー性の可能性が高いが、的確な治療のためには、アレルギー性の検査に基づく診断が欠かせない。アレルギー性の検査は次の3つを行う。
 1)アレルゲン皮膚反応またはIgE抗体の定量、2)Hansel染色による鼻汁中好酸球の検査、3)アレルゲン鼻粘膜誘発テスト。IgE抗体が陽性であっても、現在の症状の原因とはいえない場合も多く、アレルゲン誘発テストにより確定する必要があるが、問診から推定が可能な場合には省略することもできる。一方、鼻汁中の好酸球の検査は、カゼなどの後の急性鼻炎や副鼻腔炎との鑑別上、重要である。

鼻アレルギーの治療
 花粉症対策は花粉の暴露を回避することが大前提である。花粉情報に注意し、飛散の多い時には、外出を控える、住居の窓や戸を閉める、外出せざるをえない時にはマスク、メガネを着用する、帰宅時に洗眼、うがい、鼻かみをする、など。
 治療法は保存的治療法と手術療法に大別される。保存的治療法には薬物療法と減感作療法がある。保存的治療法の中心は薬物療法で、抗ヒスタミン薬、抗コリン薬、抗アレルギー薬、ステロイド薬、血管収縮薬を症状に応じて組み合わせて用いる。
 抗コリン薬は鼻汁を抑えるのに有効で鼻内噴霧薬として用いる。抗アレルギー薬には、肥満細胞や好酸球からロイコトリエン、プロスタグランジン、血小板活性化因子などの産生を抑制する、あるいはそれらのレセプターをブロックするなどの作用を持つさまざまな種類があり、多くは内服だが、鼻内噴霧薬もある。
ステロイド薬にも経口用と局所用(鼻内噴霧薬)があり、炎症が活発な場合にまず炎症をおさめる目的で使用される。特に局所用は、効果が強い、効果の発現が比較的早い、副作用が少ない、3症状に等しく有効、作用が投与部位に極限される、などの点で非常に有用である。
鼻アレルギーで最後まで残る症状は鼻閉のことが多く、これに対しては血管収縮薬(点鼻薬)が使われるが、それでも症状がとれない場合も少なくない。血管収縮薬の乱用は薬物性鼻炎を起こし、使用量が増加して血圧を上昇させる。アレルギー炎症を長期間繰り返した結果、粘膜が変性を起こして収縮しなくなる(リモデリング)こともある。難治な症例のなかには、鼻内の観察をせずに、もともと手術の対象とされるべき症例に漫然と薬物療法を行った症例が含まれている可能性がある。
 減感作療法(特異的免疫療法)は、長期寛解や治癒が期待できる点で現在でも有望な治療法であるが、効果の発現が遅く、ごく稀に重篤な全身性アナフィラキシー反応を起こすリスクを伴うので実施には経験を要する。また、抗原の検索が前提とされる。
手術療法には、鼻閉に対する鼻中隔矯正術、下鼻甲介切除術のほか、鼻ポリープ切除術、くしゃみ、水様鼻漏に対するビディアン神経切除術(鼻の副交感神経を切断・切除する方法)、最近では特殊な器具(高周波)を用いて鼻内だけで手術を行う後鼻神経切除術もときに行われている。
 下鼻甲介切除術には、メスによる粘膜切除のほか、レーザー焼灼、電気凝固、化学薬品による変性などさまざまな技法が広く使われている。また、粘膜を温存したまま粘膜下の下鼻甲介骨だけを切除する方法もあるが、花粉症よりも通年性の鼻アレルギーに有効である。いずれの方法も短期的には有効であるが、再発例もあるので長期的に有効な手術療法の選択には臨床経験が要求される。手術療法の後に減感作療法を行う事もある。


●皮膚科領域 

小澤 明 氏(東海大学医学部皮膚科学教授)

アトピー性皮膚炎の現状
 近年、自分でアトピー性皮膚炎だと思い込んで医療機関を受診したり民間療法に頼る人が非常な勢いで増加しているが、そのなかには、皮膚科専門医が診ればアトピー性皮膚炎とは診断されないケースもかなり多い。上田宏・藤田保健衛生大学教授らが愛知県で行った調査によると、アトピー性皮膚炎の有病率は15年間に3%→6%と約2倍に増加した程度であり、また、京都・大津両市の調査では20年間に大差は認められていない。
 さらに、上田教授らが愛知県下の児童・生徒13,944名を対象に行った信頼のおける調査では、有病率は保育園児で10.3%、小学生で3.9%、中学生で2.0%であり、このデータは子どもが成長する過程でアトピー性皮膚炎の症状が消失することを強く示唆している。
 これらのデータからは、アトピー性皮膚炎は徐々に増加してはいるものの爆発的な増加には至っていない、というのが実状と考えられる。

アトピー性皮膚炎の予防
 アトピー素因を持つ人に起こる皮膚炎はすべてアトピー性皮膚炎であると思い込んでいる方が多いが、両者は同じではない。さらには、子供の皮膚炎は全てアトピ?性皮膚炎と勘違いされているケースもある。日本皮膚科学会では、1)かゆみ、2)特徴的皮疹と分布、3)慢性・反復性経過、の3項目を満たすことを、アトピー性皮膚炎の診断基準とし、2)の内容として、急性・慢性の湿疹病変、左右対称性の年齢による特徴的分布をあげている。
 すなわち、アトピー性皮膚炎の発症のメカニズムにアトピー性と非アトピー性のものがあり、アトピー性皮膚炎では皮膚がカサカサしてバリア機能が障害されていることが、その両者の反応を引き起こす。皮膚バリアの障害部分からアレルゲンが侵入するとアレルギー反応によって皮膚にさまざまな病態が起こるが、アレルゲンでない環境中の刺激物質が侵入したときにも、過敏反応、易感染性などアレルギーとは別の機序によって同じ病態が起こる(図4)。
 したがって、アトピー性皮膚炎にならないように皮膚を守るポイントは、皮膚の保護と外部からの攻撃の回避、の2点である。
 日常生活の中での対策としては、スキンケアとかゆみ対策があげられる。
 スキンケアのポイントは、皮膚の清潔、攻撃から守る、カサカサ肌への対応、の3点に尽きる。一番大事なのはかゆみ対策で、要因の数が多いうえに個別的な対応が必要とされる。
 かゆみを誘発する要因には、食事、衣類、入浴、せっけん、運動、環境、髪型、化粧品、装飾品、予防接種、ストレスなどがあり、きめ細かな注意が必要である。

アトピー性皮膚炎の治療の基本
 治療に関しては、厚生省の研究班により治療ガイドラインが、0?2歳、3?12歳、13歳以上の年齢別3段階に分けて作成されている。その基本は、診断と症状の評価をしたうえで、1)日常生活指導(皮膚の保湿を含む)、2)原因・増悪因子の検索と除去、3)薬物療法、の対策を講じることである。薬物療法では、ステロイド外用薬とかゆみ止めの内服薬を用い、実際にはステロイド薬の強さを重症度別に用いるよう示している。例えば3?12歳については図5の通りである。
 治療で最大の問題は、患者さんのステロイド薬に対する拒否反応や抵抗が大きいことで、全国のアレルギー専門医と皮膚科専門医を対象とした調査によると、その41%が患者さんの拒否を経験している。逆に医師側では、皮膚科医の80%が抵抗を感じていないのに対し、皮膚科医外の医師では56%である。このことは、皮膚炎の治療に対する専門医としての皮膚科医がステロイド外用薬の功罪を知る故であろう。
その半面、患者さんを対象にした調査で、ステロイド薬の効果を実感している人が8割以上を占めており、期待と不安が交錯している様子がうかがえる。
 新しい治療薬では、免疫抑制薬として開発されたプロトピック軟膏(FK506、タクロリムス)が最近、外用薬として承認された。ステロイド外用薬に比べ、皮膚障害や中止時のリバウンド現象が少ない利点がある半面、使用法を誤るとトラブルのもとになりやすい。適応が16歳以上、びらんや潰瘍には不適と使用上の制限もあるので、上手に使うことが大事である。
 ともあれ、アトピー性皮膚炎に関しては特に治療より予防へと、対応の力点を置き換えることが何より大事であり、病状が改善した後の管理へと患者さんを誘導することが、当面の大きな課題である。


●眼科領域 

深川 和己 氏(東京歯科大学眼科非常勤講師)

目のアレルギーの特徴
 目のアレルギーには、軽症のものから重症のものまで広範な疾患が存在する。軽症の疾患にも季節性(花粉症)と通年性(ダニアレルギーなど)があり、一方、重症例では春季カタルやアトピー性角結膜炎が代表的である。軽症例の症状の特徴は、かゆみ、充血、腫れであるが、重症例では結膜が増殖し、角膜が障害される点が大きな特徴である。
 花粉がたとえ目の中に入ってきても、涙腺から涙液が正常に分泌されて目の表面を潤していれば、花粉は涙液とともに目の表面を流れ、涙点、涙小管を経て鼻へと通り抜けて行き、目の障害は少ない。しかし、涙液の循環が悪くなると、目の表面が乾き、バリア機能が低下する。同時に花粉は結膜上に滞留し、バリア機能が低下した上皮細胞を通過し、リンパ系を介してIgE抗体を産生したり、マスト細胞上のIgE抗体と結合してヒスタミン、プロスタグランジンなどのかゆみ物質を放出させ、かゆみや腫れの症状を起こす。
 問題なのは、かゆみ症状のために、患者さんが目を引っ掻いたり、こすったりして組織を破壊することである。その結果、マスト細胞の活動がさらに活発化し、かゆみ物質の放出が増幅される。この悪循環に加えて、マスト細胞の周囲に好酸球が浸潤し角膜の上皮細胞を攻撃して障害を起こしたり、結膜を増殖させる(図6)。引っ掻くことは、好酸球による炎症をも増悪させる。

治療の基本的な考え方
 目のアレルギーの治療に関しては、喘息のようなガイドラインはまだないが、基本的な考え方は次の通りである。
 1)抗原を避ける……外出時にメガネを着ける、帰宅時に家に入る前に花粉を払う、環境を整備する、など。
 2)洗う……目の周りを一緒に洗う。目の中には、人工涙液で防腐剤が入っていないものを使用するのがよい。
 3)掻かない……掻かずに、冷やす、洗う、目薬をさすように習慣づける。
 4)早めの治療
・点眼薬……抗アレルギー薬は、かゆみが始まる前に使わないと効果がない。かゆみ症状が出た後でも効果のある抗ヒスタミン点眼薬が近々発売開始される予定。ステロイド・免疫抑制剤点眼薬は一般薬にはなく、眼科医が処方するもので、効果が大きい。
・内服薬……目だけのアレルギーの場合には通常使わない。他科の疾患が合併している場合に使う。
・外科的治療……保存的治療法が無効な重症例に対して有効なことがある。


●パネルディスカッション
「アレルギー疾患の治療と予防―患者さんからの質問に答えて―」

小児喘息は完治するか
質問 小児喘息の子ですが、2?3年発作が全然なく、薬も飲んでいません。このまま完治することが考えられますか。
赤澤 気道過敏性がどれだけ残っているかを、一度評価する必要があります。簡単な方法は、走ったり運動したりしたときに運動誘発性喘息が出ないか、あるいはピークフロー値の変動がないか、を調べることです。一般的に、これらの方法で気道過敏性が取れていれば薬を減らしていく、またそういう評価が十分できなくても、ある程度時間が経ったら少しずつ減量する、というのが小児科の考え方です。その背景には、小児喘息はうまく治療していけば寛解に持ち込める率は非常に高い、ということがあります。一般的に、3年以上発作がなければ一応寛解、とわれわれは考えています。

小児の風邪と非アレルギー性喘息
質問 小児でいま喘息はないですが、風邪を引くと、ときどきゼーゼーいったり、せきが長引く状態が続いています。将来、喘息の発病につながると考えられますか。
赤澤 小児が喘鳴を発する原因は、アレ
ルギーとウイルス感染の2つです。喘息発作時に、6?8割の子で呼吸器系のウイルスが検出されるという報告もあり、風邪ウイルスも発作の原因となります。それがたまに起こる間は経過をみていけばいいで
すが、繰り返し起こり、例えば副鼻腔炎が
起こって治らずに持続するような状態になると、非アレルギー性の喘息になる可能性も考えられます。小児喘息の1?2割は、感染性の喘息発作だといわれています。

成人の喘息の治癒の見込みは?
質問 成人の喘息は非常に治りづらいと聞きますが、治ることはあるのですか。
冨岡 小児喘息では3年ぐらい発作が起きなければ「寛解」とされており、成人喘息でも同様に「寛解」という言葉が使える可能性はありますが、「治癒」は現在のところ使えません。発作がなくなって何年経ったら寛解といえるかについては、まだ決まっていませんが、ステロイド薬を上手に使って、発作を起こさない状態を長期間維持することは確実にできます。
 ピークフロー値が図1(2ページ)のグリーンゾーンの上半分、90%以上を長期間持続している例では、風邪を引いたときにも発作が起こることがなくなり、現に薬を中止できる人が出てきています。私の経験では、ステロイド薬治療により5年以上少なくとも発作がなく、風邪を引いたときにもグリーンゾーンを維持している方は10指に余ります。これらの例について、どの時点で薬を中止するか、どういうふうに観察するかは、今後の課題ですが、希望を持って頂きたいと思います。
 ただし、私どもは病状の程度を最終的には気道過敏性試験でチェックして判断しているのですが、薬を中止して長期間発作が起こらないことは可能であっても、喘息を持っていない人のレベルまでには戻らない、ということも頭のすみに入れておいて頂きたいと思います。

生理前の喘息悪化への対応
質問 生理の前になると喘息が悪化し、始まると治まるのですが、これに対してどのようにしたらよいでしょうか。
宮本 このような例はままみられ、その最大の理由は、月経前にホルモン異常を来して水分が貯留するためです。その場合は利尿薬を使うことで症状がかなり改善する例がしばしばあります。
冨岡 その通りです。生理のときに体温と一緒に体重を計ると、体重増加とかむくみが明確に出てきますから、私どもも生理の前に利尿剤を使っています。そのとき、ピークフロー値を調べると薬の効果がよく分かります。
質問 減感作療法は、本当に効果があるのですか。
冨岡 減感作療法は二重盲検法による厳密な比較試験ができないために、有効性の評価がむずかしいのですが、アレルゲンが明確な症例に対しては有効であることは明らかです。問題は、一つ一つのアレルゲンについてすべて証明されたわけではないことです。例えば、家のほこりのアレルギーの場合はダニが主ですが、わが国ではダニのアレルゲンは実地の治療に使える域に達していません。実際に症状を起こしているアレルゲンが薬剤として整備され、科学的な方法で有効性と安全性が証明されなければいけません。
 したがって、私どもはいまのところ、喘息の患者さんに対しては、減感作療法は時間がかかり、しかも危険が伴うので行っておりません。それに代わって、これから新しい本当の免疫療法が確立される、と期待しています。
久松 耳鼻咽喉科領域では、免疫療法はアレルギー性疾患の基本的な治療法であると考えています。実際、これがうまく効く例では、スギ花粉症の方でも薬剤を使わずに正常に近い日常生活を送れるようになった方が多数おられます。当初はハウスダストアレルギーの患者さんに対して行われ、20年もむかしには、スギ花粉症に対しては効かないのではないか、ともいわれましたが、ごく最近のデータではスギ花粉症に対しても70%ぐらいは有効だといわれています。有効例では2?3年で効果が現れます。数カ月間は週に1回、その後注射間隔を延長してゆき、最終の維持量は1?2カ月毎に皮下注射して経過をみて行きます。
 問題は副作用、全身のアナフィラキシーが出る例があることと、皮下注射をした局所に非常に強い反応が出た場合には放置すると全身症状の起こる可能性があることです。このような不愉快な副作用を避けて実施するのが医師の腕の見せどころです。
 最近考えだされたのが、スギ花粉の抗原成分だけを精製し、プルランという多糖体と一緒に注射することで、花粉抗原が体内のIgE抗体と反応するのを阻止する方法です。これにより、強い局所反応やアレルギー反応の危険性が少なくなりました。このスギ花粉に対する免疫治療薬はすでに治験もすんでいますので、市販されるようになれば、非常に治療に有用ではないかと考えています。

ステロイド外用薬を連用する際の注意点
質問 幼少時から約20年間、皮膚にステロイド薬を塗り続けているのですが、副作用の心配はありませんか。
小澤 外用薬だから全身的な副作用はない、というわけではありません。使い方によっては、副腎機能の低下など種々の内科的トラブルの原因にもなり得ます。ただ、ステロイド外用薬は強さが非常にまちまちで、一番弱いものを1とすると、一番強いものは2000ぐらいまであります。どの強さの薬を、どれだけの量を塗ったかによって影響が異なるので、「診てみましょう」としかいえないのです。
 また、症状の悪いときだけステロイド薬を使う場合には、どうしても強い薬ばかり使うことになりますから、ふだんから皮膚科医と相談しながら最小必要量のステロイド薬を効果的に用いることが、非常に大事なことです。
ステロイド薬の強さに関連して申しますと、顔にはこの薬、どの部位にはどの薬と、皮膚科医はステロイド薬を使う部位によって区別して使い方を指導なさっていると思います。患者さんが、こちらの薬がよく効くといって勝手に別の部位に使うことが、ステロイド薬をめぐるトラブルの最大の原因だと思います。

季節性結膜炎の予防
質問 季節の変わり目に起こる結膜炎を予防するにはどうすればいいですか。
深川 ポイントは次の2つです。第一は、目の表面のバリア機能を強化するために炎症をきちんと治療しておくこと。目の表面が乾いていたり慢性結膜炎があると、バリア機能が低下してアレルゲンが非常に侵入しやすくなります。対策としては、人工涙液でときどき汚れを除去したり、目の表面が乾きすぎないようにします。慢性結膜炎がある場合には、眼科で治療しておきます。
第二は、優れた抗アレルギー点眼薬が出ているので、かゆみが始まる季節の2週間ぐらい前に眼科を受診してすぐ使い始めることです。この薬は遅効性で、かゆみが出てからでは効果がありません。


新着情報 患者さん・一般の皆様へ 医療従事者向け 会員向け リンク 患者会情報 アーカイブ サイトマップ

Japan Allergy Foundation.
財団法人日本アレルギー協会ホームページに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
すべての著作権は財団法人日本アレルギー協会に帰属します。

お問い合わせはこちらまでお願いします。