成人喘息……死亡をいかに防ぐか
最初に大田健・帝京大学医学部内科学教授が「喘息死が成人全体では10万人当たり5人前後、合併症が比較的少ない5〜34歳の年代層でも同0.5〜0.7人にみられる。これをゼロにするのが治療者の目標だ」として、患者に対し「発症時には症状を我慢せず、判断できないときは、積極的に受診するように」と訴えた。
治療の考え方については、「最近まで、可逆性気道閉塞が喘息の特徴だとして発作を抑える薬を主に考えてきたが、最近、気道の炎症が証明されて、これも治療の対象とされるようになった」として、気道閉塞の発作に対するリリーバー、炎症をイメージした長期管理のためのコントローラーの2群の薬剤の組み合わせが現在の薬物療法の基本である、と述べた。
日本アレルギー学会による喘息予防・管理ガイドライン1998年版では、リリーバーとしてβ2刺激薬、ステロイド薬、アミノフィリンなど、コントローラーとしてステロイド薬、徐放性テオフィリン薬、長時間作用型β2刺激薬と抗アレルギー薬を推奨。また、患者の重症度に対応するステップ1〜4の各段階ごとに最もふさわしい組み合わせをあげている。その中で最も重視されているのが吸入ステロイド薬で、ステップ1(軽症)でもそれを少量使用することが提言されている。大田教授は「吸入ステロイド剤は、経口用と異なり、肝臓を通過する際に不活化され、全身への副作用が少ないのが特徴だ」として、怖がって忌避しないよう戒めた。
患者の心得として、) 薬剤を指示通りに正しく使う、) 原因の回避、) 喘息日記を付ける、)
適切な状況判断、) 主治医との信頼関係、の5点をあげ、発作時には、横になれる場合やしゃべることができる場合は、リリーバーを使用して回復を待ってもよいが、「それで改善しない場合や最初からしゃべれない、自分で判断できない場合などは、医療機関を訪れる」という原則を守るよう求めた。
小児喘息……病状の客観的把握を
小児喘息については、飯倉洋治・昭和大学医学部小児科学教授が「小児喘息は治るか?」の基本的な方向づけとし、克服のカギとして、)
喘息を自分で批判しながら判断し理解する、) 日常管理、) 医師を上手に使う、の3点をあげた。
まず、「喘息の理解は、病状を客観的に把握することから始まる」として、発作時の肺機能の変化の様子を、クリプトン・ガスを用いたイメージ像のスライド写真で喘息発作時の肺内変化を証明した。また発作時の客観的指標として呼吸数、脈拍数、ピークフローを利用し、「家庭で対処できるか、病院で治療を受けなければならない状態かを、これらの数値から客観的に評価する習慣が大事だ」と説得。気道の過敏をつねに念頭におき、過敏反応を起こす物や行動を避けることが喘息克服の基本である、と話した。
多岐にわたる日常管理の面で最重要なのは環境で、特にイヌ・ネコ・小鳥などアレルゲン排除が不可欠だと強調。また、軽い乾布摩擦で軽度の発作はおさまる、重症な子にみられる運動誘発性喘息も事前の服薬で予防できる、喘息患者ではインフルエンザ・ワクチンの有効率が高く発作の予防に有用である、などの点をデータで示した。特に、遠足のような集団行事には患児も積極的に参加させるように、と学校当局にも配慮を求めた。
発作と薬物療法の関連については「発作後約1カ月間は、クリプトン造影で肺機能低下の持続がみられ、薬剤の増量や、徐放性テオフィリンであれば服薬を継続するなどの対策が必要だ」「アトピー性皮膚炎の子に抗アレルギー薬を服用させることで、喘息への移行を有意に減らせる」などの成績を紹介した。
アトピー性皮膚炎……鑑別診断と基本的治療を重視
次に、アトピー性皮膚炎について、西岡清・東京医科歯科大学医学部皮膚科学教授が「医師が類似疾患を誤診し、原因を除去せずにステロイド剤の外用を長期間続けた結果、アトピー性皮膚炎と同じ症状になる例が非常に多い」として「正確な鑑別診断が必須」と指摘。治療と予防の現状と問題点を次のように話した。
アトピー性皮膚炎には、次の2つの局面がある。) 皮膚の過敏性、) IgE抗体を産生しやすいこと。)
は皮膚のバリアの破壊が原因で起こり、その結果、健康な皮膚には侵入できないアトピー原因物質の侵入を招く。一方、湿疹病変を生じるメカニズムは、皮膚刺激物(化学物質)、によるカブレ、IgEアレルギー、引っ掻き、治療の副作用など多様であり、その中には、薬剤を使用しなくても、原因を除去するだけで治療できるものもある。
最近、著しく増加した真っ赤な顔の原因も同じく多様であり、ドライヤーやリンス、また入浴が原因の場合もある。若い女性では、洗いすぎがアトピー性皮膚炎の予備軍を生み出す傾向がある。
アトピー性皮膚炎の基本的な治療法は、) 悪化因子の検出・除去、) 薬物療法、の2つ。)
の薬剤には、スキンケア、ステロイド外用薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬があり、特に外用ステロイド薬はバリアの破壊で起こる炎症を抑えるのに有用であるが、適用、種類の選択、引き際の決定、中止後の代替品の選定を慎重に行わないと副作用の原因となる。
皮膚には各人それぞれの個性がある。病変の原因がそれぞれ異なり、また、単一の原因とは限らない。専門医と相談しながら、生活をチェックしてその原因を探求し除去することと、皮膚に優しい生活環境をつくることが、この疾患の治療と予防に最も重要である。
新しい治療・予防へのアプローチ
次いで池澤善郎・横浜市立大学医学部皮膚科学助教授が、薬物療法、環境対策、食事療法、物理療法の全般にわたって、アトピー性皮膚炎の最新の治療の考え方を述べ、ステロイド薬感受性の個体差、皮膚表面や腸内細菌叢の湿疹病変増悪への関与、免疫薬理学的な発症機序、アレルゲン低減化食品、心因性反応による発症など、新しい局面からの治療と予防へのアプローチの試みを紹介した。
まず、ステロイド薬の作用について、これを使用した患者では、血清中のIgE値と好酸球値の低下が認められる例が多いが、なかには逆に上昇する例があり、ステロイド薬無効例に対応するものと考えられる。これをステロイド薬感受性の面からみると、ステロイド・アレルギー群、ステロイド抵抗性群、ステロイド依存性群、ステロイド感受性群に分けられ、個体差が顕著にみられる。したがって、治療に際しては、ステロイド感受性の個体差に注目して感受性群を長期寛解に導くことを考え、ステロイド薬を使用する場合には、最初から減量の仕方まで考慮したうえで、火を消すようなメリハリのきいた使い方をする必要がある、という。
また、アトピー性皮膚炎を増悪させる要因として、皮膚表面の黄色ブドウ球菌や腸内カンジダなどの細菌叢、さらに心因性の要因が関与している可能性が高く、実際にそれらに対する薬物療法が著効を示す例があることから、難治例に対処する新しい可能性を開くものとして注目されている、と述べた。
この後、4人のパネリストと参加者との間で約2時間にわたり、熱のこもった質疑応答が繰り広げられた。 |